私が眼科の仕事に従事してから10年が経つのですが、目が良いために眼科にお世話になるということがなかったので、多くの眼病があることに最初は驚きを隠せませんでした。
- 「最近目がかすんで見えにくい」
- 「ものが歪んで見える」
- 「目が疲れる」
- 「黒いものが飛ぶ」
- 「目が乾きやすい」
- 「コンタクトをしていたら目が痛くなってきた」
- 「めばちこが出来た」
- 「目がかゆい」
などといった症状を訴える患者さんは非常に多く、原因も様々です。
目の疾患は年齢に関係ないものから加齢によって発症するものまであり、長く継続して通院している人もたくさんいます。
目が見えにくくなる、見えなくなるということは、日常生活が普通に送ることが出来なくなるということを意味します。
ものを見る事で人は存在を確認し、コミュニケーションをとっています。
感情の部分でも重要な要素で、目から入ってくる刺激がなくなると、認知症などの原因にもなります。
診療に付いていて感じた事は、目の健康は日常生活で気を付けたり、目に良い環境を整えることで随分変わる、ということです。
長い時間をかけて発症するものもありますので、若いうちから目の健康にとって必要な事を知り、対策を取ることが理想的です。
それではここから、目の健康を維持するために、主な疾患と日常生活での工夫を勉強していきましょう。
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目の健康を保つために生活と環境を整えよう!
目の健康のための生活って難しいのでないのか、と思う人もいますよね。
実は目に良い環境作りは、日常生活の中にも浸透しているものもあり、理由を知れば「なるほど!」と思う事もたくさんあります。
目の症状が出ている段階で気を付けると効果があるものから、継続して行う事で高齢になってからの罹患がしにくくなるなどがあります。
なってからでは遅い、ということにならないためにも病気を知るということは大切な事なのです。
疾患によって注意する点は違ってくるので、主な疾患に合わせて、注意する点や工夫する点をご紹介します。
目の健康のために、参考にしてみてくださいね!
眼精疲労を防ぐための工夫はコレ!
年齢に関係なくおこるのが眼精疲労です。眼精疲労は単体でおこる場合と、他の眼病に併発しておこるものがあります。
若い人が眼精疲労になる原因のほとんどが、パソコンやスマホを長時間見ることでおこります。
ピントを近くに合わせ続けると、ピントを合わせるために毛様体筋という筋肉が緊張し続け、目の疲労につながります。
筋トレで腹筋に力を入れて静止し続けるなんてそうそう出来ないですよね。それを毛様体筋に強要していると考えたら、疲れてしまう事も容易に想像できるのではないでしょうか。
加齢によるものでは、老眼がすすみ近くにピントを合わせることが困難になった状態で、無理やり近くを凝視することで眼精疲労になってしまいます。
眼精疲労の改善には、毛様体筋の緊張を緩めてあげることが必要です。
では、どうすれば毛様体筋は緩むのか、ということですが、実は非常に簡単なことで毛様体筋を緩めることができるのです。
パソコンやスマホを長時間見る人は、定期的に目を離し、遠くをボーっと見る事で毛様体筋を緩めることができます。
マッサージやツボ押し、目の体操も効果的です。
眼精疲労を改善するマッサージやツボ押し、目の体操を知りたい方はこちら。
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疲れ目はマッサージやツボ押し、体操で改善される!
眼科で勤めていると、目がしょぼしょぼする、疲れるので何とかしてほしいと訴える人があとを絶ちません。 原因を調べてみると、「パソコン作業やスマホを長時間見続けることが多い」「裁縫を長い時間している」とい ...
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温タオルなどで数分目を温めると、血流が良くなり眼精疲労の改善につながります。
また、眼鏡の調節をする事によって眼精疲労が改善します。
度数の合っていない眼鏡をかけることによって見づらくなると毛様体筋が緊張するので、半年~1年に1回は眼科で視力検査を受けて眼鏡が合っているかチェックしてもらいましょう。
加齢黄斑変性症にならないための対策と環境
最近テレビなどで話題の加齢黄斑変性症は、失明の原因となる怖い病気でもあります。
網膜の中心にあって視力を司る部分を黄斑部といい、新生血管が網膜の中に出来て、出血して網膜にたまったり、老廃物が蓄積して発症します。
黄斑が委縮してしまった場合は、現在の医療では治療法がない厄介な病気です。
症状は、ものが歪んで見える・視力低下・中心が黒く抜けるなどで、片目に発症した場合は、発症していない目が見え方を補うので気付くのが遅れるので注意が必要です。
加齢黄斑変性症の原因の一つに光によるダメージがあげられます。
スマホやパソコンの普及によって、ブルーライトによる悪影響や、有害紫外線の影響によって発症数があがっているとも考えられています。
加齢黄斑変性症を予防するには、ルテインの摂取が推奨されています。
ルテインは緑黄色野菜に多く含まれているので、普段の食事にカボチャやほうれん草、ケールなどを取り入れるとよいでしょう。
ルテインサプリを日常に取り入れるのも有効です。
光によるダメージの予防は、ブルーライトをカットする眼鏡の着用が有効です。
ブルーライトをカットする眼鏡は、眼鏡専門店各社から販売されているので、好きなデザインのものを選ぶとストレスなくかけることができますよね。
屋外スポーツを長時間行う場合には、UVカットのあるサングラスの装用が望ましいですが、球技など装用が難しい場合にはUVカットコンタクトレンズを選択するとよいでしょう。
現在販売されているソフトコンタクトレンズは、UVカットのあるものと無いものがありますので注意が必要です。
ちなみに私はジョンソン&ジョンソンのワンデーアキビューモイストを愛用しています。
目が悪くないからコンタクトとは縁がない!という人は、帽子の着用など、直接目に光が入らないように工夫することをおすすめします。
加齢黄斑変性症が気になる人は、普段から時々片目ずつで物をみて、歪みがおこっていないかチェックする習慣をつけてみましょう。
目の清潔を保って結膜炎から身を守ろう
通年、結膜炎の患者さんも多く受診に来られます。
結膜炎は流行性結膜炎、アレルギー性結膜炎、細菌感染による結膜炎があります。
学校や会社を休まなければならない、伝染性の結膜炎が流行性結膜炎とよばれています。
流行性結膜炎はウイルスによるもので、同じタオルを使ったり、お風呂やプールでも感染します。
感染した目を触った手で触れたものを他の人が触ることで感染したりもします。
流行性結膜炎は悪化すると角膜に傷を作り、視力が低下することもあります。
角膜に深い傷ができてしまうと再生しないので、発症したらすぐに眼科を受診しましょう。
予防としては、流行性結膜炎になった人との接触を避けることです。
しかし、自分がウイルスによる風邪をひいた場合、ウイルスが目に入ることで流行性結膜炎を起こすこともあります。
手洗い、うがいに注意し、電車の中はマスクをするなどの工夫をしましょう。
アレルギー性結膜炎は、アレルギー反応を起こす物質に触れた場合におこります。
抗アレルギー薬の内服や、抗アレルギーの点眼で治療することができます。
花粉が原因の場合、その季節が来たら、花粉用眼鏡を使うと発症頻度が低下します。
抗アレルギー薬の服用と抗アレルギー薬の点眼を、いつも発症する時期の2週間前から使用すると予防することが出来ます。
ハウスダストが原因の場合は、こまめに掃除をすることで結膜炎の軽減につながります。
寝具も清潔に保つことが必要です。
ハウスダストが舞い散ると吸引してしまいますので、クイックルワイパーなどでふき取った後で掃除機をかけ、最後に拭き掃除をすると完璧です!
細菌性の結膜炎は、まつ毛に生息するダニによるものや、まつ毛がしっかり洗えていなくて、汚れが付着していることで細菌が繁殖する場合があります。
ダニが原因の場合は、ダニの駆除が必要になりますが、細菌感染が原因の場合は洗顔の際にまつ毛の生え際をしっかりと洗浄しましょう。
普通の洗顔ソープでも良いですが、まつ毛シャンプーも市販されています。
コンタクトレンズが原因で起こる病気から目を守ろう
コンタクトの装用によって起こる病気には角膜潰瘍や角膜びらん、巨大乳頭結膜炎や角膜血管新生などがあげられます。
他にもコンタクトが原因で起こる疾患が多くあるのですが、正しくコンタクトレンズを装用できていないことから起こっている場合は非常に多く見受けられるのです。
コンタクトは手軽ですが、ついつい長期装用や、1日使い捨てを数日使用、粗悪品のカラーコンタクトレンズの装用、2週間タイプの洗浄不足など、軽く考えてしまう事によって発症します。
直接目に入れる危険性を考えて、慎重に装用することを念頭に置いてください。
特に角膜潰瘍が深くなってしまって穴が開くと、再生はしないので移植をしなければならない状態に陥ります。
正規コンタクトレンズ販売店や眼科で処方されていない粗悪品のカラーコンタクトレンズは、レンズの表面に色素が乗っているだけのものがあり、目の中で溶けだしてしまうトラブルも急増しています。
コンタクトレンズは信頼のおけるメーカーをチョイスすることも大事です。
コンタクトによる眼病予防は、長時間の装用を控えることにつきます。
必要時以外は眼鏡を使用することで多くの眼病が予防できます。眼鏡は持っていないという人はこの機会に是非眼鏡を作りましょう。
また、安全のためにも、2週間タイプのものより1日使い捨てをおすすめします。
白内障と予防の方法はコレ!
白内障は高齢の人しかならない、という印象を持っている人がほとんどではないでしょうか。
確かに70代以上になれば、程度に関係なくほとんどの人が白内障を発症しています。
しかし、アトピー性皮膚炎がある人やステロイド長期服用などの人では若年でも白内障になるリスクはあります。
また、ボールが目に当たった、木の枝が目に刺さったといったことから外傷性白内障にかかった人も実際にはいました。
白内障で視力低下が起こっている場合の治療方法は手術しかありませんので発症を少しでも遅らせることができると、生涯白内障の手術をしなくても良い場合もありますので、日常生活でも工夫して生活することが大切です。
白内障は、レンズの役割をしている水晶体が濁ってしまうのですが、原因は老化によるものの他、紫外線の影響も大きくなります。
紫外線は前述した加齢黄斑変性症の原因にもなるため、屋外では帽子やサングラスの着用、日傘をさすなど工夫して過ごしましょう。
アトピー性皮膚炎の場合、かゆみを紛らわせるために目をたたくことがあるのですが、それによって水晶体にダメージを加え、若年でも白内障を発症してしまいます。
かゆみのコントロールを行うために、定期的に皮膚科や内科を受診しておきましょう。
翼状片は長期に渡る紫外線対策が有効!
結膜と呼ばれる白目の部分が分厚くなり、黒目の部分にまで進出する病気を翼状片といいます。
特に痛みなどはありませんが、炎症を起こして充血したり、異物感がおこることもあります。美容的な要素が大きいのですが、瞳孔まで伸びてくると視力に影響を及ぼすようになってきて、根本的な治療は手術しかありません。
充血や異物感に対して抗生剤の点眼薬で治療をすることもありますが、出来る事なら翼状片にはなりたくありませんよね。
長年の紫外線の影響によって、高齢になったときに発症するともいわれています。
日頃からの紫外線対策が発症しないための予防策なので、紫外線が強い時間帯にはなるべく屋外に出ないことや、帽子、サングラス、日傘を使用する項に心がけることが大切です。
目の健康のために正しい日常生活を送りましょう。
多くの目の疾患は、ちょっとした生活の工夫や環境を変えることで予防することができます。
特に紫外線は加齢黄斑変性症・白内障・翼状片など、目の病気に大きく関わってくることがわかっています。
直接目に紫外線を長時間浴びないように注意することで、これらの病気にかかりにくくなるのです。
結膜炎や角膜炎は、悪化すると生涯にわたって視力に影響を残してしまいます。ちょっとした注意で軽症ですむ場合もありますので、是非対策をとっていきましょう。
目は日常生活を送るためにも必要なものであり、視力が低下してしまうと普段の行動にも支障がでてしまいます。
目の健康のために日常生活や環境を整え、いつまでもくっきり、はっきりした毎日を過ごすように心がけましょう。
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目の健康のためとはいえ、すべての対策をきっちり行うのはなかなか難しいかもしれません。
特におすすめしたいのは、加齢黄斑変性症の項でもご紹介したルテインのサプリを取り入れることです。
ルテインは、紫外線だけではなく、ブルーライトからも目を守ってくれる頼もしい成分です。
目に良い成分が複数入ったサプリを使えば、他の病気や疲れ目の予防にも繋がりますよ。